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衝撃の事実!あの曙が…大相撲から学ぶ営業の「イメージ戦略」

先日、テレビ番組で衝撃的な映像を見ました。
それは相撲界の大横綱 曙の姿です。

つい数年前まで、元気に格闘家をしていた姿を記憶していたのですが、それが今は見る影もない姿に・・・現在は、歩くことも、食事を1人で取ることも、儘ならない状態になっているのです。

曙は今年の4月に急性心不全となり、その時に心臓が止まっていたそうです。その影響で手足が不自由になり、そして重度の記憶障害に・・・。

その記憶障害のレベルはひどく、子供の事を自分の弟だと思っていたり、夫人が昨日看病していたことも憶えていない状態なのです。

このテレビ番組の企画は、このような重度の記憶障害になっている曙に対して、当時のライバルであった若貴兄弟の若乃花と引き合わせるというものでした。

病院の廊下を歩いて曙の病室に向かう若乃花。
ベッドでぼーっとしている表情の曙。

私はそのテレビ番組を見ながら「いや、さすがに憶えていないだろ・・・」と想像していたのです。

自分の子供の事や、毎日付き添っている夫人の事を忘れるような記憶障害。そして当時のライバルとはいえ、頻繁に会っていた訳ではない2人。それで憶えていたらそれこそ奇跡。

そんなシーンは絶対に見ることはできないだろうと思いながら、会った瞬間に全く反応しない曙を想像してしまったのです。

そして若乃花が曙の病室に入り、いよいよ対面の瞬間です。
若乃花がベッド横の仕切りカーテンを開いた瞬間・・・曙が若乃花を見て

「お!久しぶり!!」

まさかの曙が若乃花に反応したのです。
そして笑みを浮かべて若乃花に話しかけにいったのです。

あんなに度の記憶障害に陥っていたにも関わらず、そして久しぶりに会うにも関わらず、曙は若乃花を憶えていたのです。

そして、若乃花は曙に向かって「また、一緒に両国の土俵に立ちましょう!」と話しかけ、そして曙は「今度、飲みに行こう」と会話を交わしていたのです。

 

なぜ、曙は若乃花を憶えていたのか?

私の予想を覆す2人の姿に感動すら覚えました。まさか記憶に残っているとは・・・

しかし、その状況を見てある事を思ったのです。それはこの2人は本当に因縁のライバルだったのであろうと・・・

なぜ記憶に残っていたのかは、考えられる理由が2つあります。

 

理由1:感情が伴う記憶だから

まず1つは、人は感情が伴っている記憶については鮮明に憶えています。

あなたも過去を思い出してみてください。

過去、記憶に残っている思い出は、怒ったり、泣いたり、笑ったり、悲しんだり、そういった感情が伴っているシーンは鮮明に憶えていると思います。

これは記憶を司る海馬の近くに、感情を司る扁桃体があり、感情が刺激されると海馬にもその刺激が及び記憶に残りやすいからです。

この理論から当時、曙は本当に若乃花の事をライバルだと認識しており、1つ1つの取り組みに怒りや喜び、悔しさなどをあらわにしていたことが想像されます。

 

理由2:相手を何度もイメージしていたから

そしてもう1つ、取り組みだけではなく繰り返しイメージしシュミレーションしたのではないかと想像されます。

稽古中に何度も相手をイメージしてトレーニング。練習相手の力士を若乃花に見立てて何度も何度もシュミレーション。「こうきたら、こう返す」など何度もイメージトレーニングを繰り返したのではないかと思うのです。

そして、その「インパクト」×「回数」が強い記憶へと繋がっていった・・・

私はそう思ってしまったのです。

 

お客様の頭を占拠してマーケットシェアを拡大する

ビジネスにおいて顧客の脳内シェアを獲得するのかは非常に重要なテーマになります。

なぜなら、顧客の脳内シェアの獲得はマーケットシェアに比例するからです。

例えば、あなたが「自動車メーカー」といってイメージする企業はどこでしょうか?

トヨタ、日産、ホンダ、マツダ、スズキ、ダイハツ・・・
いくつかのメーカー名が出てきたと思いますが、その企業のほとんどがマーケットシェアの大部分を獲得していると思います。

他にも、飲料メーカーといえばどこをイメージしますか?

コカ・コーラ、サントリー、アサヒ飲料・・・
出てきたメーカー名とマーケットシェアを比較するとどうでしょうか?

ほとんどが、「簡単に想像できる」=「マーケットシェア大」<だったと思います。

そして、脳内シェアに残るかどうかが、事業存続を大きく左右します。

お客様の記憶に残らなければ、事業の存続は難しい

アメリカの有名な経営者としてGEのジャックウェルチはご存じでしょうか?

GEというのは世界屈指のコングロマリット(複合型)企業として有名で、産業用ソフトウェア、各種センサ、鉄道機器、発電および送電機器など多岐に渡る事業を経営しています。

その巨大企業を作り上げたジャックウェルチの名言として、こんな名言があります。

「市場における地位が1位もしくは2位でない事業は、早々に1位か2位になれるように立て直さなければならない。それができない事業は撤退か閉鎖か売却だ

これは何を意味しているかというと1位か2位であればしっかり利益を残すことができるのですが、それ以外はいずれマーケットから退場することになるという意味を指しているのです。

そして、その言葉通りジャックウェルチはいくつかの事業をスッパリと切り落としたのです。

 

脳内シェアを獲得するメリット

ジャックウェルチの事業に対する考え方は、営業にも密接に関連することです。

思いつきやすさが人に与える影響として利用可能性ヒューリスティックという言葉があります。これは行動経済学の言葉で、想起されやすい情報を優先して判断してしまうという人間心理です。

 

例1.ドレッシングの購入時の選択心理

例えば、あなたが会社帰りに奥さんから「サラダドレッシングを買ってきて」と言われたとします。しかし、今日は見たい番組があり急いで帰らないといけない。

あなたは急いでサラダドレッシングの棚を見て商品を選択する時に、簡単に思いつく商品を手に取ります。

その商品とは、いつも使っているドレッシング。

そしてそのドレッシングを見て「いつものだから間違いない」と思うのです。簡単に想像できるものを「購入」し、「間違いない」と高く評価するのです。

 

例2.予定外のランチで受ける印象

これは急いでいるからという理由だけではありません。例えば、あなたが今日のランチに何を食べようかと考えたとします。

そして真っ先に思い浮かんだものがハンバーグだったとします。
元々はハンバーグを食べようと思ったのですが、同僚からラーメンを誘われ仕方なくラーメン屋に行ったとします。

あなたは注文したラーメンを目の前にして何となく「やっぱり今日はハンバーグだったかな・・・」と後悔したりするのです。

利用可能性ヒューリスティックには>先に思いついたメニューを高く評価してしまうという特性もあるのです。

この心理は営業にも大いに活用することができます。

お客様が、最初にあなたの商品を思い浮かべる事ができれば、利用可能性ヒューリスティックにより、高く評価されたり、間違いないと思ってもらえる可能性が高まってくるのです。

 

お客様の脳内シェアを獲得する方法

脳内シェアを獲得するには、あなたやあなたの商品をお客様の脳内に記憶させていくことが必要>になります。

記憶というのは大きく分けて2つあり、「短期記憶」と「長期記憶」がありますが、短期記憶から長期記憶に移行することができれば、お客様は何かあった時にあなたを真っ先に思い浮かべるのです。

そこでどのようにしていけば長期記憶に残っていくのかを解説します。

長期記憶とは、これまた大きくは2つに分解することができます。その2つとは「宣言的記憶」と「手続き記憶」です。「宣言的記憶」は更に2つに分解することができ、それが「エピソード記憶」と「意味記憶」に分解されます。

エピソード記憶とは物語が伴う記憶。旅行に行った思い出など記憶が鮮明にあるのは、そこにストーリーがあるからです。これは感情が伴う事で記憶に長く留まっていきます。

そして意味記憶とは、意味を関連付けることで記憶に残していく方法です。例えば、「風邪には大根を食べることが有効だ」などは意味記憶に該当します。また、「イイ国作ろう(1192)鎌倉幕府」などの語呂合わせも意味記憶に該当します。

そして「手続き記憶」。手続き記憶とは、自転車に乗れるようになるというもので、繰り返し経験することにより憶えていく記憶です。

 

営業のイメージ戦略は「手続き記憶」を使え!

このような記憶の種類を眺めた時に、営業で一番使いやすいのは「手続き記憶」
これは組織営業するという観点で最も適したものといえます。

営業担当者に商品説明にストーリーを語れ!といっても難易度が高い。良い語呂を考えて商品を記憶させる事も簡単にできる事ではないし、記憶へのインパクトとしては弱い。

繰り返しの接触により記憶に残していく方法が最も簡単で、マネジメントにも向いています。

営業活動で「手続き記憶」を活用するには、接触頻度をどれぐらいにするかも重要です。

できれば毎日接触したいが、複数の顧客を担当する営業からすると、それは非現実的です。だからこそ最低でも接触しておかなければならない頻度を頭に入れて営業活動を行うことが大切です。

そんな時に参考になる情報が競合の接触頻度。

「競合は一体どれぐらい接触しているのだろうか?」それをお客様に聞いてみても良いと思います。

そして、その頻度を上回る訪問回数を設定し、組織のルールとして運用する。そんな考え方が必要になってくるのです。