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「目標達成率97%、結構惜しかったね」に潜む営業部の危険性

コンサルタントの水田です。

先日、クライアント先の経営者の凄さを改めて感じる出来事がありました。

定期的に経営状況をお伺いしているのですが、このクライアントは業績好調で、ここ10年ぐらいで年商は2倍にまで拡大し、昨年行った粗利率アップの施策は営業組織の持ち前の実行力で大幅に改善。

億単位の上乗せ利益を創出する結果になりました。

そんな絶好調の企業の経営者と話していると、その社長がおもむろにこう言いだしたのです。

社長「今期は秋頃から景気の波がくると思っていましたが、その波が早くきました。早々に手を打たなければなりません」

こう社長が語った背景は何かというと7月の実績を見て業績が悪くなったと判断したのです。しかもその判断軸が月次ベースでは昨対比は十分に上回っているのですが、日割りベース(売上÷稼働日)で見ると微減している。

このわずかな変化に敏感に反応して、経営の舵を切ると判断したのです。

 

なぜ、業績好調の経営者は感度が高いのか?

これはあるマネジメント研修で行ったワークです。

「行動/能力/意識という3項目を10段階で自分自身を評価すると何点ですか?」

そして自分自身を10段階で評価したあと、周囲のマネジャーとその点数を見せ合い、なぜその点を付けたのかを共有するのです。

点数のつけ方や、その基準はバラバラ。
中には、自分はまだまだできていないと熱く語るマネジャーもいます。

そんな作業を終えたあと、もう一度、自分自身を10段階で再評価してもらうのです。

そうすると、どうなると思いますか?

ここで再評価してもらうと、多くの方が最初に付けた点数より低い点数をつける傾向にあります。

なぜ、多くの方が点数を下げたのでしょうか?
その人の行動や能力や意識が瞬時に低くなったのでしょうか?

そんなことはありえません。
そんな瞬時に変化するものではありません。

では、なぜ点数が低くなったのか?

それは、マネジャーたちの「あるべき姿」が変わったからです。

 

あるべき姿を認識すると……?

元々は自分なりの評価で点数を付けました。

しかし、その後の共有の時間で熱くなって語る意識の高いマネジャーを目の当たりにしてマネジャーのあるべき姿が高くなったのです。

その結果が自分の点数評価のダウンです。

このあるべき姿を引き上げるというのは、組織や人の成長にとって大きな効果を生み出します。

現状とあるべき姿のギャップが課題となる訳ですが、そのギャップが大きければ大きいほど問題意識が高まります。問題意識が高まると、焦点化の原則により、情報をキャッチアップする能力が高まります。

焦点化の原則というのは、脳がある物事に焦点を合わせると、それに関連する情報を無意識のうちにキャッチアップするという原則です。

例えば、老後の2000万円問題の新聞記事を読んだ後に、やけにidecoや投資信託、資産活用という文字が目に飛び込んでくる現象がまさにそうです。これも焦点化の原則によって引き起こされている作用です。

このように問題意識を感じると、解決策に対する情報への感度が上がり、情報をキャッチアップする可能性が高くなります。

そして情報をキャッチアップする可能性が高まれば、その問題が解消される可能性も高くなってくるのです。

そんなに簡単に問題は解消できないと反論される方もいるかもしれませんが、問題を問題として認識していない方よりもはるかにその可能性は高くなると言うと、同意せざるを得ないはずです。

問題解決能力というのは、スキル的な要素もありますが、その前提として目の前の事象をどこまで感度高く、問題として認識できるかにもかかっているのです。

 

あなたの組織は、問題意識は高いですか?

問題意識の低い組織として典型的なのが、売上の大半が安定化してしまっている組織。

売上がアップしないがダウンもしない。ダウンもしないというのは少し語弊があって徐々に、わずかならが減少している組織。

「目標は達成していないが、目標達成率が97%、結構惜しかったね」

そんな会話がなされているようなら非常に危険です。

あなたの組織が、問題意識が「高いか」「低いか」を図る上で、最も色濃くその様相が見える場所があります。

それが会議です。

あなたの会社にも経営会議や営業会議というものがあると思います。

その時の周囲の発言をよく思い出してみてください。

次のどれかに当てはまるようなら問題意識が低いと言えるでしょう。

・テーマを決めても会議まで何も用意してこない
・テーマについて問題提起を促しても何も意見が出てこない
・そのクセ、他人が出した問題提起には“そもそも論”で批判する
・何か行動を変えるという事に異常なまでに反発してくる
・現状がどれだけ大変かをとにかく訴えかけてくる

あなたの組織はどれだけ当てはまったでしょうか?

 

ぬるま湯組織を変える方法

上のような「ぬるま湯組織」は、ある意味これまでの蓄積がそうさせています。
この蓄積が長ければ長いほど、組織を変えていくのは一苦労です。

では、このぬるま湯組織を作り上げた原因とは一体なんなのでしょうか?

それは、これまで問題意識を持たずに蓄積してきた歴史であり「習慣」です。

習慣というのはなかなか変えることが難しく、あなたもなかなか変えられない習慣を持っていると思います。

例えば、お酒を飲みすぎる、タバコを吸う、毎日間食してしまう、お菓子がやめられない、飲んだ後に必ずラーメンを食べる・・・

やめればいいのに辞められない習慣というものがあります。

組織がぬるま湯に浸り、新たな行動を起こそうとしないのも習慣。

なかなかやめたくてもやめることができません。

では、そんな悪しき習慣をどのように変えていけば良いのでしょうか?

それは習慣がどのようにできあがっていくかを因数分解すると、その答えが分かってきます。

習慣=「インパクト」×「回数」

この公式からすると強いインパクトを与えるのか、小さなインパクトでも回数多く与えていくのか。

もしあなたの組織がぬるま湯に浸って変わらないのであれば、あなたがあるべき姿を指し示し、それを繰り返し唱える必要があります。
そして評価制度や管理方法に、その方針を埋め込み、嫌でも分からせていく必要があるかもしれません。

しかし、それは時間もかかり、労力も掛かること覚悟で行わなければなりません。

もし、あなたがそんな時間をかける余裕がない、もしくはそんな事をしても変わるとは思えないと感じるほど深刻なのであれば、頼るべきものは外圧です。

例えば、組織を強烈に推進してくれる営業責任者を雇う。これはかなりのインパクトになります。

また、コンサルタントを雇い、組織に強いインパクトを与えても良いでしょう。

優秀な経営者は、時間をお金で買います。M&Aなどはその典型。

もし、あなたがいち早く現状から脱したいのであれば、時間をお金で買うという選択肢を頭に入れておいても良いのかもしれません。