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「できる営業」出身のマネジャーが部下の成長の機会を奪う?!


コンサルタントの小嶋です。

先日、ある会社の人事部長様と面談をしました。

別のコンサルティング会社から人事制度・評価制度設計の支援を受けられているのですが、営業部への教育について相談したいことがある、とのことでした。

その会社では、会社全体の研修をはじめとする教育計画も立てられており、毎年決まった固定の研修に加え、その年のテーマや課題に合わせて組み込んでいく研修なども企画されていました。

営業に何を教育すべきかわからない……

会社全体での年次研修や階層別研修などは決まった研修があり、またその時々で研修内容を少しカスタマイズしながら実施されているのですが、営業部の場合、どのような教育が適しているかが分からずに困っている、ということだったのです。

もちろんその会社でも営業部に向けた研修は行っていました。

若手~中堅営業担当者向けの研修からリーダーシップ研修、マネジメント研修など様々な営業研修を実施しているものの、毎年の数字が芳しくない。数字に直結する部門だからこそ、「今、自社で行っている研修は意味があるのか?」と疑問を持っていらっしゃったのです。

会社として研修の機会を設けていることは、非常に素晴らしいことです。

多くのお客様とお話している中で、計画を立てた研修を実施している会社はあまり多くないように感じます。

「必要に応じて」であったり、「本人で勉強すること」という会社も少なくありません。

会社として、従業員に身につけてほしい・身につけるべき知識を習得する機会を提供することは、従業員に対して求めることの意思表示としても重要な要素になります。

ですが、研修だけで良いかというともちろんそうではありません。

「できる営業」出身マネジャーが危険な理由

今回の企業様のケースでは、営業の業績が芳しくないとのことだったので、そこを掘り下げて人事部長様にお伺いしました。

するとひとつの問題が露わになったのです。

その問題とはマネジャーが部下の仕事を奪っているというもの。

「できる営業」出身のマネジャーに陥りがちな状態そのものでした。つまり、部下がするより自分でやった方が早く結果に結びつく。だから自分で全部する。そんな状態になっていたのです。

これまで結果を出し、今のポジションについた方々ですので数字の作り方は分かっています。

そのため、最初は部下1人1人の商談や案件に「こうした方が良いよ」と指導していきます。

指導が細かくなるケースが多く、時間と手間ばかりかかってしまいます。それで商談や案件の状態が変わればまだ問題は大きくなりません。

しかし部下の行動や商談・案件の状態は変わらないと、チームの数字が達成しない……ことになりかねません。

そんな時、マネジャーが「全部、自分でやる」と自分が代わりに動いてしまうのです。

部下の成長の機会を奪わないために

マネジャーが部下の仕事をすることは、結果として部下が経験する機会を奪っています。

部下は本来やるべきことを経験しないため、成長できないまま年数だけを重ねます。

いつまで経っても部下は成長できませんので、来年も再来年もマネジャーが部下の数字まで作るために動き回り、悪循環から抜け出せなくなります。

会社から与えられた目標を達成させることは、マネジャー・営業担当者それぞれの役割です。

しかしマネジャーであれば、自分の目標だけでなく、部下に目標を達成させることも役割のひとつです。だからこそ部下にいかに考えさせ、考えたものが合っているのかを指導していくための体制を作ることが大切になります。

まずはマネジャーにマネジャーとしての役割を認識させ、その上で上記を可能にする体制や仕組みを構築することがポイントです。

まずは部下がどのような考えで営業活動をしているのかを把握し、その行動に対してマネジャーが適切に部下指導する。

そしてマネジャーが指導したことを部下が理解し、改善しているのかをマネジメントするというPDCAを意識して実践してくださいね。