予材管理の現場から 予材管理ブログ

売れない営業マンが予材管理で変われる理由

コンサルタントの桑原です。

現在の私は、コンサルタントプロフィールにもありますように東証一部上場企業をはじめ、多くの企業で営業のみならず、営業のみならず、会社全体のリソースを最適化し経営目標を達成させる組織体制を作り上げるお手伝いをしています。

そんな私も20余年前は、商品を背に担ぎ一軒一軒お客様のご自宅に訪問し、日々の売上を稼ぐ一訪問販売員でした。

いわゆる飛び込み営業、というものですね。
始業前に当日中に売らなければならない商品や資料の準備はもちろん、その日のノルマを売れなければ会社には帰れない、というのがあたり前の環境の中、日々ピンポンを押して回っていました。

販売実績をあげるための会社からの指導といっても、基本的には商品知識が中心で「どうやって売るのか」ということについては先輩方から聞く「俺のときはこうだった…」という体験談や苦労話ばかり…

そうは言っても日々のノルマは迫ってくるわけですから、ひとりひとり「自分たちなりに」工夫しながらやり切るしかなかったわけです。
 

私が勝てなかった営業マン

そのような環境でありながらも、私は学生時代から訪問販売や実演販売などに取り組んでいたこともあり、自分で言うのもなんですが会社から評価されるだけの相応の実績はあげていました。

ところが、そんな私でもどうしても当時、販売でどうしても勝てない男がいたのです。

その男は、冴えない風采、言葉もたどたどしい。
ただ、そいつは決まって始業前、部屋の角に向かって立ち目を瞑り、

「そうですね、〇〇様。こちらの商品を手に取られた方は皆さんそのようなお悩みをお持ちの方ばかりで…」
「こちらをご覧になっていただけるでしょうか。そうです、こちらです。〇〇様、そうでしょう…」

と、ずっとブツブツ、自分に言い聞かせるようにセールストークを独り、ロープレを繰り返していました。

ロープレ、というのは正しくないかもしれません。
自分がお客様に何を見せ、何を伝えるべきなのか、確認を繰り返しているといった感じです。

その独りロープレは始業前の時間にとどまらず、その日の売りを立てて帰社してからも数時間。
日中は駆けずり回っていますから、文字通り四六時中考えている状態。

「俺は物覚え悪いから、せっかくお時間いただいたお客様にちゃんと説明して差し上げなきゃいけないから…」

そう言いつつ、来る日も来る日も部屋の角に向かって独りロープレを繰り返す。
最初こそ、まったく販売につながりませんでしたが、2か月を超えたあたりから急速に販売実績を伸ばし、最終的には個人のお客様への販売ではついに最後まで勝つことができませんでした。

あれから20年以上経ち、予材管理を用いて、多くの企業で売れる営業マン、営業組織づくりのお手伝いをしてきた今だからわかります。

私が勝てなかった営業マンが四六時中やっていたこと。
彼は白地をえがいていたのです。
 

白地をえがくことで売れる営業マンに鍛える

白地とは、予材管理における3つのファクターの中で最も重要な要素です。
「予材ポテンシャル」があり、今期チャレンジしたい材料。
その名のとおり、「真っ白」な状態の予材で、お客様もまだ認識していない「仮説」の状態のことを指します。

狭義では、営業管理ツールである予材管理シートに目標の2倍から逆算して不足分を白地として予め定めて記載し、それを仕掛りにすべくお客様との間で信頼関係の構築をすすめ、情報のやり取りをする状態の営業材料としてマネジメント対象とします。

仕込んだ目標の2倍の予材に対して、上司と部下のあいだで逆算して具体的な取り組みを考え、実践し、検証することを繰り返すことで目標未達のリスクを避け、安定的な目標達成を習慣づけるのです。

実際の現場指導においては、狭義の営業管理ツールにおける一記載項目にとどまらず、白地ひとつひとつのあるべき姿(見込みになった状態)に焦点をあわせ、それに対する現状を事実にもとづき正しく認識し、あるべき姿と現状のギャップ(=空白)を徹底的に考えさせます。

「このお客様に、この商材を、来年の1月までに1,000万円どうしてもご採用いただきたい!」
「でも、現状は窓口担当者様とのやり取りだけで、キーマンとの面談も実現していない…」

このようなあるべき姿と現状のギャップ(=空白)を埋めるべく、

「どうすればキーマンと面談ができるのか」
「そのために窓口担当者の方には、どのような働きかけをすればよいのか」
「その際にお持ちする資料はどのようなものが」
「あるいはキーマンとの面談につなげるには別のルートが」

お客様に動き、選んでいただける理由や、それに対応するためのアクションを掘り下げ、そのアクションに必要となる資料などの準備をさせます。

さらに修練をすすめるとアクションひとつひとつにも白地をえがいてのぞむよう指導します。

「お電話に出られる方にどのように語りかけ、どのような言い回しをしたら担当者につなげていただけるのか」
「商談にあたっては、このような立場の方もいらっしゃるので、その方にはこちらの仕様とデータをお示しして…」

予め考え、充分に準備させたうえでお客様のもとにお伺いする。

売れる営業マンからすれば、やってあたり前のこと。
あたり前のことであるからこそ、それら予め行っておくべき様々なことが組織だって体系的に行われていることはほとんどありません。

先日も予材管理を導入しはじめたとある企業で、唯一安定的に目標達成し続けているトップセールスがえがいた白地を掘り下げました。

「この金額を見込めるのはなぜ?」
「過去実績からとのことですが、なぜこの実績が続くの?」
「一度発注をうけたらウチにしかこない理由は?」
「貴方にしか相談がこないからってことはわかりましたが、なぜ貴方にしかこないの?」
「なるほど、貴方は設計段階から仕様と素材にかかわるようにして、他企業に代えがたい状況からつくるわけだ。」
「だから貴方は他の営業マンとちがって、設計の方にも接触を持ち続けていたのね…」

予材管理はトップセールスがどう考え、どう立ち回っているのか。無意識のうちに考え、実践していることを顕在化させ、組織に共有させることを可能にします。

多くの営業現場で、
「アイツはちがうから…」
「お客様の状況が良いから…」
というレッテルで片付けてしまいがちです。

しかし予材管理をもちい、思考と行動の量が見えるようになることで、そのようなレッテル貼りの営業マンほど考えている深さも、行動の量も少ないことがはっきりと形になってわかります。

目に見えているものだけを管理対象とした「案件管理」や「商談管理」では、この思考の深さと行動の量は見過ごされがちです。

環境変化に関わらず結果を出し続けるトップセールスは、与えられた環境下で結果を出すために深く考え、誰よりも行動しているものです。
それは個別具体的なやり方の話ではなく、無意識のうちに考え、動いてしまうあり方の話なのです。

まさに20余年前、私が勝てなかった男が、毎朝壁に向かっておこなっていたことと同じです。

売れない営業を売れるようにする。
このようなアプローチは、ともすると本人の属人的な資質や、ロープレという手段に意識が向きがちです。

しかし、その本質は「どうしたら売れるのか」ということ正しく考え、動くことに他なりません。
予材管理の本質は「最低でも目標予算を達成させる」ということを組織に再現性のある形で体得させるメソッドです。
売れない営業マンが予材管理で変わっていくことを、皆さんも体験いただければ嬉しいです。

また予材管理を詳しく知りたい方はこちらの記事で分かりやすく解説していますので、ぜひご確認ください。